部分改造における細分化

 今回も当ブログをご覧頂き、ありがとうございます。

 前回から、特定のケースに沿ったRounderの使用例ではなく、Rounderの各ツールを個別にピックアップし、その基本的な仕様や特性の面から、様々なケースが考えられる部分改造において、Rounderの各ツールをどのように応用できるかについてご覧頂いております。

 今回は、「スムーズ細分化」をピックアップして取り上げたいと思います。

スムーズ細分化の主な仕様

 通常のフラットな細分化と違い、周囲の形状に応じて丸みを付けて細分化するのがRounderのスムーズ細分化です。

スムーズ細分化の仕組み

 スムーズ細分化が実行された辺の両端から中心へ向かうベクトルを基準に、細分化される辺の両端に向かうベクトルに置き換えられた隣接する辺の中から、基準のベクトルと最も向きが近い辺が両サイドそれぞれ自動で選び出され、その2つの辺を構成する4つの頂点が描く軌道上に、細分化で新たに生成された頂点を配置するのがスムーズ細分化の通常の機能です。

 また、Rounderのスムーズ細分化は、COM3D2のボディーなど、人体モデルの細分化に特化した細分化ツールとして開発していますので、汎用的な細分化ツールでは不都合な処理結果になってしまう谷間や角などの形状に対しては、先ほどの通常とは異なる処理を行うことで、人体モデルの細分化に不都合な処理結果にならないように制御しています。

 尚、Rounderのスムーズ細分化の処理の中身や、Blenderの「細分化(スムーズ)」との比較について知りたい方は、過去の記事をご覧頂ければと思います。

スムーズ細分化と軌道修正ツールとの関係

 スムーズ細分化の辺の自動選択の精度向上には限界があるため、スムーズ細分化は細かなモデリングや改造には適していません。
 そのため、細かい部分のモデリングは、任意の軌道上に頂点を配置できる軌道修正ツールに丸める役割を持って行かれてしまうため、部分改造におけるスムーズ細分化はただの細分化ツールに成り下がってしまいがちです。

 ちなみに、スムーズ細分化と軌道修正ツールは、辺や面を細分化して新たな頂点を生成するか否かと、辺の選び出しを自動で行うか任意で行うかが違うだけです。

スムーズ細分化軌道修正ツール
細分化の有無ありなし
辺の選び出し自動任意

 また、スムーズ細分化で形状に応じて行われる3種類の処理は、以下の軌道修正ツールに対応します。

スムーズ細分化での形状判定対応する軌道修正ツール
通常の処理任意の頂点で軌道を修正する:並列
任意の頂点で軌道を修正する:直列
谷間の処理ヴァレー処理:反対側で検出された角度を適用
角の処理クレスト処理:角度0を適用

三角面モデルは大の苦手

 また、スムーズ細分化の辺の自動選択は、三角面のモデルに対しては、選び出しの精度が極端に下がりますので、三角面のモデルをきれいに細分化したい場合は、復元ツールを併用するなどの工夫が必要になります。

 それに関しての詳細なやり方は、過去の記事をご覧頂ければと思います。

面貼り条件

 スムーズ細分化の際の面貼りは、条件が非常にシビアで複雑なのですが、スムーズ細分化を実行した時点で三角面か四角面でなければ実行されないという捉え方で差し障りはありません。

 例えば、下の画像の左側のように、中心の面だけ細分化すると、赤い丸印がしてある面は、4角形ではなく5角形になってしまいますので、それらの面に対してスムーズ細分化を実行すると、右の画像のように面貼りは実行されません。

 また、面貼りが実行されなかった面は、そのことを知らせるために選択状態になります。

自動で有効になる機能

 編集中のモデルの面を全選択した状態でスムーズ細分化を実行すると、細分化前のモデルの頂点に対して、「オリジナルのモデル情報を記憶する」が実行され、「オリジナルの頂点を保護する」も自動で実行されます。

 また、辺や面を細分化すると、その際に生成された頂点の座標が未編集の頂点の座標としてその都度記憶され、検索ツール「未修正の頂点を検索する」で、生成直後から頂点が動かされているか否かを確認することができるようになります。

四角面の細分化と既知の不具合

 四角面に対してスムーズ細分化を実行した場合、面の中心にできる新たな頂点の位置を決めるために辺の選び出しを行うプログラムが、先ほどの辺を細分化する際のものとは別にあるのですが、現在、このプログラムに不具合があるため、左下の画像の赤で囲んだ面に対しては、左右非対称になってしまうような辺の選び出しが行われてしまいます。

 これを回避するための応急処置は、このような面があった場合、予め面を縦に分割してからスムーズ細分化を実行すれば、左右非対称になるような辺の選び出しは行われません。

部分的に細分化する場合の注意点

 モデルのポリゴン全体をより細かくするのはハードルが高くてやりたくないという方でも、改造する一部分に関しては、より滑らかにしたいという方は決して少なくないのではないかと思います。

 ここからは、Rounderのスムーズ細分化に限らず、一定の範囲を部分的に細分化する場合や、一つの辺や面をピンポイントで細分化する場合の注意点を、私個人の見解などを交えて書いていきたいと思います。

場当たり的な細分化は失敗しやすい

 ある範囲のみを細分化する場合、どの範囲を細分化するのかを予めよく検討し、細分化する範囲が決まったら、その範囲を一気に均一に細分化したほうが無難です。

 逆に、細分化する範囲を決めずに、場当たり的に細分化する箇所をなし崩し的に拡大させてゆくと、ポリゴンフローがぐちゃぐちゃになったり、ポツンと一か所だけバツ印の箇所ができて、そこになかなか消えない影ができたりと、あまりいい結果になった記憶がありません。

 特に、辺や頂点の削除を行いたくないケースでは、場当たり的な細分化は避けたほうが無難です。

境界の処理

 モデルの一部の範囲を細分化した場合、忘れてはいけないのがその境界の処理です。

 三角面なら四角面、四角面なら5角形の面になった面が、細分化した周囲に必ずできます。

 この境界を上手く処理できるかどうかも、部分的な細分化では何気に重要になってきます。

 最も無難な境界の処理は、下の図のように、その状態のまま、同じ面の中で、辺を生成できる2点を結んで面を分割する方法です。


 ただし、この方法は、線が密集している箇所に筋状の影ができてしまうことがあります。

 一方、全くもってお薦めできないやり方が、辺や面をさらに細かくしてしまう方法です。

 この方法は、余計な影を作ってしまうリスクがさらに高まりますし、ポリゴンフロー的にも美しくありませんのでお薦めしません。

「辺を時計回りに回転」を活用したポリゴンフローの再構成

 先ほどの無難な境界の処理で、線が密集している箇所に筋状の影ができてしまった場合に活用できるBlenderのツールが「辺を時計回りに回転」または「辺を反時計回りに回転」です。

 このツールを上手く活用することで、線の密集が緩和されたポリゴンフローに再構成できる場合があります。

 左上の状態から、「辺を時計回りに回転」または「辺を反時計回りに回転」を使用して辺を回転させて右上の図のようにし、四角面になった面を左下の図のように分割すると、最初に紹介した右下のポリゴンフローよりも窮屈な感じが緩和されたポリゴンフローになります。

ピンポイントの細分化を試す前に

 モデルに影になっている箇所があった場合などにも、「辺を時計回りに回転」や「辺を反時計回りに回転」でポリゴンフローを再構成することで影が消える場合もありますので、周囲の面よりも不自然に面を細かくする前に試してみることをお薦めします。

 このように、「辺を時計回りに回転」「辺を反時計回りに回転」を活用したポリゴンフローの再構成は、三角面モデルのモデリングでは、基本的かつ重要なテクニックになりますし、上手く活用すれば不必要な細分化をしなくて済む場合もあります。

影ができやすいポリゴンフロー

 これは、必ずしもというわけではないのですが、下の2つの画像は、嫌な影ができやすいポリゴンフローですので、なるべくなら避けたほうが無難です。

まとめ

 スムーズ細分化は、大まかな作業を担当するツールなので、細かな部分を詰める部分改造においては有効な使いどころは正直ありません。部分改造においては、ただの細分化ツール以外の何ものでもありません。

 さて、次回は、軌道修正ツールについて掘り下げて紹介したいと思います。

 それでは、今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。