部分改造における軌道修正ツール
今回も当ブログをご覧頂き、ありがとうございます。
今回は、モデリング初心者のみならず未経験者でも、頂点を何個か順番に選択して実行するだけで、美しい曲線や曲面になるように頂点を配置してくれるRounderの主役、軌道修正ツールについて詳しく解説したいと思います。
軌道修正ツールの種類
今現在、Rounder1.0では、6種類の軌道修正ツールが実装されています。
その中で、操作方法や処理の仕組み、考え方などが、最も典型的で他の軌道修正ツールのベースとなっているのが「任意の頂点で軌道を修正する:並列」です。
他の軌道修正ツールは、「任意の頂点で軌道を修正する:並列」の変形や応用ですので、まずは、「任意の頂点で軌道を修正する:並列」について詳しく掘り下げ、それ以外のツールは、「任意の頂点で軌道を修正する:並列」とどこがどう違うのかという観点で今回は解説していきたいと思います。
任意の頂点で軌道を修正する:並列
まずは、「任意の頂点で軌道を修正する:並列」の基本的な使い方ですが、下の図は、明らかにやらせ的な極端な例ですが、下の図のように線を歪めている頂点があって、それを右下の図の白丸で囲んだ頂点の並びに沿った位置に移動させたいとします。
その場合、軌道修正したい頂点が3番目に来るように、合計5つの頂点を1セットとして、方向はどちらからでも構わないので、端から順にアクティブで選択状態にして「任意の頂点で軌道を修正する:並列」を実行します。
すると、3番目にアクティブにした頂点が、1、2、4、5番目にアクティブにされた頂点の並びに沿った位置に移動します。
実はこのとき、アクティブにした5つの頂点は、軌道修正のターゲットとなる3番目の頂点を除き、それぞれ隣り合う頂点を結んだ3つの辺に置き換えられて、赤丸で囲んだ部分の角度から、三角比などの計算を行い、3番目にアクティブにされた頂点の位置を決めます。
ここで重要なのは、三角比云々の話ではなく、上の図のように、真ん中の白い辺と、その両端の黄色の辺、この3つの辺の単位で、軌道修正のターゲットとなる頂点の位置を決めるということと、他の軌道修正ツールは、この3つの辺の選び方がほんの少し違うだけという点です。
この後の「任意の頂点で軌道を修正する:直列」「ヴァレー処理:反対側で検出された角度を適用」「クレスト処理:角度0を適用」の解説では、その点に着目して頂ければと思います。
並列とは
「任意の頂点で軌道を修正する:並列」は、5つの頂点を1セットとして、何セットでも一度にまとめて処理させることができます。
ちなみに、Rounderのツールは、特に直列と表記されているツールでなければ、ほとんどが並列で何セットでもまとめて処理できます。
アクティブとは
アクティブとは、Blender2.79以前のデフォルトの操作ではマウスの右ボタン、Blender2.8以降のデフォルトの操作ではマウスの左ボタンで、頂点、辺、面などを一つずつクリックすると、下の図のように白で表示されます。
この状態がアクティブになった頂点、辺、面の状態です。
一旦、このアクティブで選択状態にされた頂点などは、選択状態が解除されるまでは、選択状態にされた順番をBlenderが保持していて、Rounderの軌道修正ツールは、その順番をもとに処理を行いますので、アクティブとその順番が重要になります。
任意の頂点で軌道を修正する:直列
「任意の頂点で軌道を修正する:直列」は、軌道修正したい頂点が3番目に来るように、合計5つの頂点を1セットとする点は並列と同じですが、直列の場合、2セット目以降は、前の1セットの4番目と5番目の頂点を、次の1セットの1番目と2番目の頂点として再利用します。
それ以降の処理は、「任意の頂点で軌道を修正する:並列」と全く同じです。
ヴァレー処理:反対側で検出された角度を適用
「ヴァレー処理:反対側で検出された角度を適用」の使い方は、軌道修正したい頂点が2番目に来るように、合計4つの頂点をワンセットとして端から順にアクティブにして実行します。
ヴァレー処理は名前の通り、谷間を横断する形で頂点をアクティブにして「任意の頂点で軌道を修正する:並列」を実行した場合、下の図のように陥没などの不都合な処理結果になってしまうケースを処理するための軌道修正ツールです。
ちなみに、右上の「任意の頂点で軌道を修正する:並列」で陥没した頂点にヴァレー処理を実行したものが下の図です。
「任意の頂点で軌道を修正する:並列」では、左下の図のように真ん中の白い辺の両端の黄色の辺を2本指定する必要があるわけですが、そのうちの片方の辺が右下の図のように使い物にならないときに使用するヴァレー処理では、片方の黄色の辺を直接選ばないため、アクティブにする頂点が4つになります。
そして、黄色の辺が指定されなかった側には、右下の図のように反対側の赤丸の角度と同じになる辺があると仮定して、左下の図のような3つの辺の単位に置き換えられ、三角比がどうたらこうたらという処理に引き渡されます。
以上が、某動画で巫女さんが黙々と作業に打ち込んで説明してくれなかった部分の詳しい解説です。
クレスト処理:角度0を適用
クレスト処理の頂点の選択パターンは、ヴァレー処理と全く同じです。
ヴァレー処理とクレスト処理の違いは、使い物にならない側の辺の代用品が、白い辺との角度が0になる辺、すなわち、白い辺に重なって同じものがもう1本あると仮定して、それ以降の処理を行います。
ヴァレー処理とクレスト処理の使い分け
クレスト処理は、もともと、スムーズ細分化で立方体などの角ばったものまでわざわざ丸める必要はないのではないか、ということで設けた制御をそのまま手動化したツールで、名称もそこから来ていますが、ヴァレー処理と違って、名称通りの使い方をする機会は皆無です。
手動なら、丸めたくない部分、角ばったままにしておきたい部分は、何もしなければいいわけなので。あるいは、普通の細分化を使えばいいわけです。
それでもクレスト処理が生き残っている理由は、ヴァレー処理の補助的なツールとして、多少利用できるからです。
典型的なケースは、人体モデルのお尻の狭い部分にヴァレー処理を使った場合、左下の図のように、角度が付き過ぎて左右の頂点が入れ違いになってしまうというようなとき、クレスト処理なら、ヴァレー処理よりも抑えた角度で丸みを付けることができますので、右下のように貫通を修正できる場合があります。
フラット
フラットは、2番目にアクティブにした頂点を、1番目と3番目にアクティブにした頂点のちょうど真ん中に置きます。
1番目と3番目の頂点を結ぶ辺に対して、普通の細分化を実行した状態に戻します。
やはり、何事も一方通行はよくありません。一度丸めたものをもとの単純に真っ二つに細分化しただけの状態に戻したい状況というものも多分あるはず、ということで追加したのがフラットです。
このツールは、軌道修正ツールというよりは、ユーティリティーツールです。
某動画では雑な説明しかしてもらえないことでしょう。
2つの軌道の中点上に移動
このツールは、これまで一度も紹介していませんでしたが、この軌道修正ツールは、軌道修正したい頂点が3番目に来るように、合計9個の頂点をワンセットとしてアクティブにします。
このツールは、「任意の頂点で軌道を修正する:」で、縦でも横でも斜めでも今一しっくりこないというときに、2方向の軌道を別々に計算し、さらにその間を取るというもので、現在、試験的に実装しているツールです。
頂点の選択パターン
これまで軌道修正ツールの使用例で、下の図のように外側の頂点だけ1個飛ばしでアクティブにするパターンに、「何で」と疑問に持たれている方もおられるかもしれません。
左下のように、全て連続でアクティブにしたり、あるいは、さらに外側の頂点を選んだ場合はどうなるのかですが、それぞれ「任意の頂点で軌道を修正する:並列」を実行した結果がさらにその下の図です。
一見すると同じように見えますが、左側の全て連続で頂点をアクティブにした方はフラット気味になっているのに対し、右側の外側だけ2個飛ばしでアクティブにした方は、目視ではそうは見えませんが、ややとがり気味になっています。
これは、頂点の選び方によって、左下の図の白い辺と黄色の辺の赤丸の角度が異なるためです。
右下の図では、左上の例は赤線、右上の例は緑の線に相当するわけですが、左下の図の赤丸の角度が、右下の図の赤線に近づくほど、軌道修正のターゲットとなる頂点は中心へ向かい、水色の線に近づくほど外側に向かいます。
ちなみに、左上の緑の丸で囲んだ頂点の初期の座標(やらせ的な改変を受ける前の座標)に最も近くなるのは、黄色の線の角度で軌道修正したときです。
まとめ
現在、Rounderには、6種類の軌道修正ツールが実装されていますが、使い分けるポイントをざっとまとめると以下の通りになります。
- 「任意の頂点で軌道を修正する:並列」が最も基本的な形態で、他はその変形や応用。
- 「任意の頂点で軌道を修正する:直列」は、前の1セットの頂点を再利用するため多少手間が省ける。
- 「ヴァレー処理:反対側で検出された角度を適用」は、上の2つが使えない状況で使う。
- 「クレスト処理:角度0を適用」は、ヴァレー処理では角度が付き過ぎて困るぅというときに使う。
- 「フラット」は、平らな状態に戻したいときに使う。
- 「2つの軌道の中点上に移動」は、1つの軌道ではどれもしっくりこないときに使ってみる。
ということで、今回は軌道修正ツールについて詳しく解説しました。
順番からして次回は、検索ツールについて解説したいと思っていましたが、今後は、アドオン開発に重点を置きたいため、当サイトの配布物に関するブログでの使用例や解説は、要望があったもののみ行うスタイルへ移行させて頂きたいと思いますので「これ解説して」というものがありましたら、コメント欄などから気軽にご要望願えればと思います。
それでは、今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。