形が著しく崩れている箇所の修正方法

 今回も当ブログをご覧頂き、ありがとうございます。

 前回は、COM3D2のボディーのBasisを四角面にして細分化してコピペした直後の主だった修正箇所を例に、Rounderのどのようなツールを使って修正するのかについてご覧頂きましたので、今回は、Basis以外のシェイプキーということでmunelの修正を中心にご覧頂きたいと思いますが、非常に険しい山道となっておりますので準備をしっかり整えてから臨まなくてはなりません。

修正前の準備

 では、munelの修正前に挑む前に、そのために役立つかもしれない情報をできる限り用意してから修正作業に臨みたいと思います。
 具体的に行うことは、次の4つです。

  • munelのオリジナルの状態を記憶する(左右対称化済み)
  • munelのオリジナルの頂点を保護状態にする
  • munelの四角面で細分化された状態をコピーする
  • 未修正の座標を設定する

munelのオリジナルの状態を記憶する

 まずは、オリジナルの頂点とそうでない頂点を区別するため、そして、munelのオリジナルの頂点を保護するために、munelのオリジナルの頂点の座標を取得たいと思います。
 ただし、左右非対称になっている頂点は、左右対称にしてから記憶します。

下処理済みのモデルをロード

 今回は、単にオリジナルのモデル情報だけではなく、四角面でコピペされた状態のmunelの頂点の座標も用意したいので、以前保存した下処理済のデータをロードします。

左右対称化

 COM3D2のボディーは、Basis以外のシェイプキーは左右対称になっていない頂点がほとんどなので左右対称化します。

 ちなみに、Rounderの左右対称化ツールは、処理が非常に重いので、全選択で実行するのはお薦めしません。予め左右対称化が必要な頂点だけを「左右対称でない頂点を検索する」で選択状態にし、その頂点のみに左右対称化を実行します。

 左右対称化を実行したら、もう一度、左右対称になっているかどうかを確認します。
 このとき、左右中央の選択状態の頂点は、xの値が完全に0ではないので直接入力してxの値を0にします。

 左右対称化が済んだら、munelは非常に難易度の高い修正箇所が多いので、その後も度々修正することがあるかもしれませんので、左右対称化が済んだ状態も下処理済みとして保存します。

オリジナルのモデル情報を記憶する

 左右対称化が済んだら、munelの頂点を全選択して「オリジナルのモデル情報を記憶する」を実行し、まずは、一つ目の準備は完了です。

munelの四角面で細分化された状態をコピーする

 コピペ後のmunelには、一部の頂点に貼り付けミスがあるため、それらの頂点を手動で貼り付け直すために、munelを四角面で細分化した各頂点の座標をコピーします。

スムーズ細分化

 先ほどの下処理と左右対称化が済んだmunelを全選択してスムーズ細分化します。

 このとき、全選択でスムーズ細分化を実行しているので、オリジナルの頂点の保護が自動で有効になりますので、2つ目の準備はこの時点で完了です。

 尚、スムーズ細分化された状態も保存しておきたい場合は、先ほどの下処理済みとは別のファイルに、各シェイプキーごとにスムーズ細分化された状態を保存する必要がありますのでお薦めはしません。

左右対称になっているかを確認

 スムーズ細分化が済んだら、コピーする前に、念のために左右対称になっているかを確認します。

 すると、どういうわけか左右非対称の頂点がある場合がありますので左右対称化します。
 ちなみに、Basis、arml、munesは大丈夫なのですが、その他のシェイプキーは左右対称化した後でもスムーズ細分化後に左右非対称の頂点が生成されますので注意が必要です。

四角面で細分化された頂点をコピー

 左右対称化が済んだら、munelの頂点を全選択して「選択中の頂点の座標を記憶する」を実行し、3つ目の準備も完了です。

未修正の座標を設定

 最後は、修正した頂点とそうでない頂点を区別するための情報を念のために用意しておきます。

前回までの編集データをロード

 これから編集するボディーが保存されているファイルを開きます。

オリジナルのモデル情報から未修正座標を設定

 そうしたら、シェイプキーをこれから修正するmunelに切り替え、編集モードにしたら、特に頂点などの選択は必要はありませんので、オリジナルのモデル情報のサブメニューにある「オリジナルのモデル情報から未修正座標を設定」を実行します。

 数十秒程度、処理に時間が掛かりますが、この処理が終われば、修正前の準備は完了です。

貼り付けミスの修正

 それでは、munelの修正をしていきたいと思いますが、いきなり軌道修正ツールで修正する前に、まずは、貼り付けミスにより、頂点が入れ違いになっている箇所や、そもそも貼り付けそのものがスキップされている箇所を直していきたいと思います。

貼り付けがスキップされた頂点を手動で貼り付ける

 そもそも、なぜ貼り付けがスキップされている頂点があるのかと言うと、座標コピペツールの貼り付けを担当する「選択中の頂点に近いコピー中の座標を適用」というツールは、「選択中の頂点の座標を記憶する」で記憶された頂点の数と、貼り付け先の頂点として選択された頂点の数が同じだった場合、重複や入れ違いを防止するためのプログラムが働くのですが、その際、同一の貼り付け先の座標に3つ以上の頂点が競合する場合、貼り付け処理がスキップされるようになっています。

 そこで、先ほどコピーした四角面で細分化されたmunelの頂点の座標ではない頂点を探せば、貼り付けがスキップされた頂点を探し出せるということで「コピー中の座標に存在しない頂点を検索する」という検索ツールを、この記事を書いている際に「あ、こういうのもいるわ」ということでちゃっかり追加しました。

 ということで、早速、munelの頂点を全選択して「コピー中の座標に存在しない頂点を検索する」を実行した結果が下の画像です。

 選択状態になっている頂点がコピーされている座標とは違う頂点です。

 中には、今回修正するmunelとは全然関係ない部位なのに選択状態になっている頂点もありますが、これは、前回合成したBasisの修正箇所が反映された頂点ですので、こういった輩は無視します。

簡単なケース

 それでは、貼り付けがスキップされた頂点が分かったところで、一番簡単そうな下の画像の3つの頂点を例に、手動で貼り付けする様子をご覧頂きたいと思います。

 まずは、真ん中の頂点ですが、現在コピーされている四角面で細分化したmunelは、左右対称化してからコピーしていますので、貼り付けが実行されているなら左右中央の頂点はxの値が0でなければならないわけですが、この頂点は完全な0にはなっていません。

 と、ここで、その頂点を選択したまま、「選択中の頂点に近いコピー中の座標を適用」(以下、貼り付けツール)を実行すると、下のようにxとyの値が微妙に変化しました。

 他に競合する頂点さえなければとっくに辿り着けていた場所に無事辿り着くことができたわけです。

 次は、向かって左側の頂点を選択して貼り付けツールを実行します。

 すると、先ほどの真ん中の頂点からしたら「最初からそこに行けよ」と言いたくなりそうな位置に移動しました。

 さて、反対側の頂点も同じように修正したら、今の修正箇所を選択状態にして、「コピー中の座標に存在しない頂点を検索する」で本来の貼り付け先に貼り付けられているかどうかを確認します。

 モデリング的にはこの配置でいいのかどうかはともかく、選択状態になっていないということは、現在コピーされている位置に貼り付けることはできたということです。

難しいケース

 今の修正箇所は、楽なケースの例でしたので、今度は少し難しいケースということで、下の画像の箇所を直したいと思います。

 真ん中の頂点は先ほどと同じなので割愛して、その両脇の頂点を貼り付けし直したいと思います。

 まずは、向かって左の頂点ですが、この頂点はそのまま貼り付けを実行すると、下のように他の頂点と重複してしまいます。

 このような場合は、フリーハンドで、大体この辺にありそうかな、と言う位置に頂点を移動させてから、貼り付けを実行します。

 運よく本来の貼り付け先の頂点が一番近くになる場所に頂点を移動させることができていれば、下のように他の頂点と重ならない位置に頂点が移動します。

 反対側の方は、今のような手探りのやり方ではなく、もっと確実な方法ということで、今修正した左側の頂点を先にアクティブにしてから、これから修正する右側の頂点を続いてアクティブにし、左右対称化のサブメニューにある「任意の頂点で左右対称にする」を実行します。

 すると、1番目にアクティブにした頂点の座標を、2番目にアクティブにした頂点に左右反転させて適用させることができます。

入れ違いになっている頂点を直す

 次は、入れ違い、つまり、貫通している箇所の修正です。

 一見すると「うわっ」という印象を受けますが、入れ違いの修正そのものは見た目ほど難しくはありません。

 この頂点とこの頂点が入れ違いになっていそうだと思った頂点を2つずつアクティブにして「2つの頂点の位置を入れ替える」を実行すると、簡単に直せます。

 形状的には問題ありますが、コピペという観点からは、それぞれの頂点の位置そのものは問題ないため、頂点の位置を交換するだけで修正できます。

 この要領で他の頂点の位置もあと2回入れ替えます。

 すると、ご覧のように、たった3手で貫通は解消されました。

 尚、このツールはミラー編集には対応していませんので、左右両方とも自分で直します。(ミラーにするとせっかく直したのにまた……みたいなことが起こるので)

munelの軌道修正

 貼り付けミスの修正が済んだら、後は軌道修正ツールで形状を整えていくだけですが、修正作業に入る前に、万が一、左右非対称の頂点があると、その頂点とその相方にはミラー編集が機能しませんので、念のために左右対称になっているかどうかを調べます。

 なければ、念のために、未修正の座標を現時点のものに更新して修正作業に入ります。

外周

 この手の修正は、Rounderの十八番ですので、サクサク修正していきたいと思います。

 まずは、どの頂点を修正するべきなのかを見極めるために、修正したい箇所とその周辺を選択状態にして「オリジナルの頂点を検索する」を実行します。

 上の画像で選択状態になっている頂点がmunelのもともとの頂点(正確にはそれに近似の頂点)なので、この頂点に基づいて、その他の頂点の位置を修正します。

 一通り修正し終わったものが下の画像です。

谷間上部

 胸の谷間を上からのぞき込むという大変破廉恥な行為を行うと、ご覧のようにOの字に隙間がありますのでこれを修正します。

 これは、先ほどの胸の外周の修正で修正していなかった谷間の奥の部分で、下の画像の選択状態になっている頂点のうちの向かって左側から縦2列目の線が歪んでいますのでこれを直します。

 この部分は、ヴァレー処理で修正したいと思いますので、向かって左側から横1列に4つの頂点をアクティブにして「ヴァレー処理:反対側で検出された角度を適用」を実行します。(もっと詳しい使い方は前回の投稿で)

 すると、先ほどのOの字は消えました。

 谷間のさらに上の方の角ばったポリゴンフローもヴァレー処理で修正します。

 正直、この修正はやってもやらなくても見た目はそれほど変わりませんので、その辺はお好みで。

谷間中部

 ここは、修正方法としては、特に目新しいものはありませんが、こういう修正箇所もあるという程度にご覧ください。

谷間下部

 先ほど、頂点が入れ違いになっている箇所の修正例としてご覧頂いた、谷間の下部の皮膚がだぶついたような感じになっている箇所の修正は、軌道修正ツールでは上手く直せません。

 試しに、まずは、下のようにアクティブにして軌道修正ツールを使ってみます。

 しかし、ほとんど効果がありません。

 このようなケースで意外と使えるツールが、Rounderの対極的な存在の「フラット」です。

 このツールは、アクティブで3つの頂点を選択状態にして実行すると、下のように、2番目の頂点が1番目と3番目の真ん中に配置されます。

 今の操作を、それぞれの頂点を一つずつずらして右端から左端に到達するまでこの操作を次々に行っていきます。

 すると、先ほどのぼこっと盛り上がった部分がなだらかになりました。
 このように「フラット」というツールは、ヘラで均すような使い方ができるわけです。
 ということで、今の作業を何回か繰り返します。

 さらに何回か行ったものが下の画像です。

 オブジェクトモードに切り替えてみると、最初よりは、大分影が薄くなりました。

 ちなみに、munelの値を0.9にするとほとんど影は見られません。

胸下部

 胸の外側の下部も影が濃い箇所があります。

 これも、先ほどのフラットで均すのが無難な修正方法です。

 さっきよりは、影が薄くなりました。

 尚、ここまで紹介した修正方法は、飽く迄もほんの一例に過ぎません。
 もっといい修正方法が他にある可能性は十二分にあるはずです。

 自分としても、最後の2箇所は、正直納得はしていませんので、ツール開発も含めて、より良い修正方法を今後も探していきたいと思っています。

COM3D2のボディーをハイポリゴン化するデメリット

 今、ご覧頂いたmunelの修正が仮に上手くいったとしても、Rounderを使ってCOM3D2のボディーをハイポリゴン化する場合にはもう一つ重大な問題が付いて回ります。

 例えば、正六角形の平面を元の頂点の位置はそのままに丸みを付けるて正十二角形にした場合、もとの正六角形よりも面積が増えることになります。つまり、太るわけですが、そうなると、肌に密着する下着や靴下などは貫通してしまいます。

 この貫通の問題に対する最も簡単な対処法は、全体的に細くすることですが、その場合、全ての箇所で貫通しなくなるまで細くした場合、指などの細い部分がガリガリに痩せこけてしまい、ボディー全体のバランスが崩れてしまいます。

 クオリティーを重視するなら、一番いい方法は、下着類もボディーに合わせて細分化することですが、はっきり言っていばらの道です。
 COM3D2の服の改造は、ボディーの改造では想定していなかったことが多々あるため、その分、難易度も上がりますので、紹介しておいてなんですが、あまりお薦めはしません。

 ただ、COM3D2のボディーをハイポリゴン化する様子を通じて、COM3D2のモデルのように、シェイプキーやテクスチャーなどが既に設定されているモデルを改造する場合のやり方や注意点などは、ハイポリゴン化でも部分改造でもそれほど違いはないと思いますので、これから自分もモデル改造をと考えている方は知っておいて損はないと思います。

 というわけで、Rounderを使うリスクやデメリットは一通り紹介しましたので、本日からRounderをリリースしたいと思いますので、興味がある方は、ダウンロードページの方もご覧頂ければと思います。
 次回は、COM3D2のボディーの部分改造についてご紹介したいと思います。

 それでは、今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。